結論:搬送件数と時間帯の偏りで決まります
自院の救急車と民間救急は、どちらが優れているという関係ではありません。
判断の分かれ目は、搬送の件数がどれくらいあり、時間帯にどれだけ偏りがあるかです。
件数が多く、平日日中に集中しているなら自院運用が向きます。
件数が読めない、あるいは時間外に飛び込みが多いなら、外部委託を組み合わせたほうが無理がありません。
以下、3つの軸で比較します。
軸1:費用の性質が違う
もっとも大きな違いは、金額の大小ではなく費用の性質です。
自院救急車は固定費です。
車両の購入費またはリース料、車検・整備、保険、そして運転する職員の人件費が、搬送が0件の月にも発生します。
1件あたりの単価で見れば、件数が増えるほど下がっていきます。
民間救急への委託は変動費です。
依頼した分だけ費用が発生し、依頼がなければ発生しません。
1件あたりの単価は自院運用より高く見えることが多い一方、稼働の谷を抱え込まずに済みます。
したがって「どちらが安いか」は件数次第で逆転します。
月あたりの搬送件数を把握せずに比較しても、答えは出ません。
軸2:人員をどこから出すか
自院で救急車を運用する場合、誰が運転するのかという問題が必ず出てきます。
職員が運転する場合、その時間はもとの業務から外れます。
搬送が2時間かかれば、その職員の2時間分の本来業務が止まるということです。
さらに、運転する職員には安全管理の体制が必要になります。
点呼、アルコール検査、日常点検、日報の記録といった業務が、搬送の前後に発生します。
外部委託であれば、これらは委託先が担います。
自院の職員配置に手をつけずに搬送手段を確保できる点が、委託の実質的な価値です。
軸3:稼働率と、ピークの重なり
自院に救急車があっても、必要なときに空いているとは限りません。
退院・転院が集中しやすい時間帯や曜日があり、そこに依頼が重なります。
1台しかなければ、2件目以降は待つことになります。
このとき選択肢は3つです。
- 患者様に待っていただく
- 2台目を持つ(固定費が倍になる)
- 重なった分だけ外部に出す
現実的なのは3番目です。
自院救急車を基本線に置きつつ、ピークだけ民間救急で吸収する形にすれば、稼働率を落とさずに待ち時間も抑えられます。
組み合わせるという答え
実務では「どちらか」ではなく「どう組み合わせるか」が答えになることが多くあります。
- 平日日中の定例的な搬送は自院救急車
- 時間外・休日、および同時発生分は民間救急
- 遠距離や長時間拘束される搬送は民間救急
こうすると、自院救急車の稼働率を保ちながら、断らざるを得ない搬送を減らせます。
また、自院救急車を持ちながら運行そのものを委託するという形もあります。
車両は自院のもの、運転と安全管理は外部という分担です。
車両を保有する意味を残しつつ、職員の負担だけを外に出したい場合の選択肢になります。
検討を始めるときに集めたい数字
比較の前に、次の数字を出しておくと判断が早くなります。
- 月あたりの搬送件数(直近12か月)
- 時間帯・曜日ごとの分布
- 1件あたりの平均所要時間
- 搬送のために本来業務を離れた職員の延べ時間
- 断った、または待っていただいた件数
特に5番目は記録に残りにくい一方で、体制を見直す根拠として最も説得力があります。
まとめ
自院救急車と民間救急の違いは、固定費か変動費か、人員を自院から出すか外から出すか、ピークをどう吸収するかの3点に集約されます。
件数が多く時間帯が読めるなら自院運用、読めないなら委託、というのが基本形です。
そして多くの病院では、両方を組み合わせる形が現実的な着地点になります。
まずは月あたりの件数と時間帯の分布を出してみてください。
数字が出れば、比較は難しくありません。
当社は搬送の受託だけでなく、病院救急車の導入支援や運用受託も行っています。
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